細胞培養加工施設とは
細胞培養加工施設(CPC:Cell Processing Center)とは、再生医療治療に用いる細胞を培養・加工するための専用のクリーンルームであり、日本においては「再生医療等安全性確保法」に基づいて厚生労働大臣への届出が必要な施設とされています。
この施設の特徴は、厳密な清浄度管理の下、工学的・微生物学的に衛生環境が維持されていることにあります。
当施設では、清掃や消毒の徹底に加え、定期的なメンテナンスや専用のクリーンウェアの着用、また作業者の衛生教育を行うことで、細胞に塵や埃、微生物などの不純物が入らないように細心の注意を払っています。
我々はこのような厳密な管理を徹底することにより、患者様に安全で高品質な細胞を提供致しております。
当院の細胞培養加工施設
安全キャビネット
安全キャビネットとは、空気の流れをコントロールすることで、感染性物質を封じ込めつつ、無菌的な空間を構築する装置です。
当施設では、合計7台の安全キャビネットを備え付けており、細胞の培養や品質検査、研究開発の用途に用いています。
安全キャビネット内の清浄度はグレードAに位置付けられており、空気1,000リットルあたりの微粒子数(0.5μm)が3,520個以下である必要があります。
この清浄度は自然界で例えた場合、成層圏と同等の清浄度に匹敵します。
長期安定性細胞保存装置
当院では大型の液体窒素タンクに最新の米国製ロボットアームを搭載して、凍結細胞の管理を行っています。このロボットアームを用いることで、液体窒素タンク内の特定箇所のみに絞って目的の検体を回収することができます。これによって、必要以上の細胞を常温に暴露するリスクを抑えることができるため、細胞を長期間安定的に保管することが可能です。
このロボットアームは国内でも導入例が非常に少なく、2023年現在では特定の大学病院のみに配備されています。
当施設では、細胞の品質を確保する上で細胞の安定的な保管条件が重要であると考え、関東では最も早くに本設備を導入しました。
専用のクリーンウェア
当施設では、清浄度管理区域に入場する者は必ず専用のクリーンウェアを着用します。
これはヒトの皮膚あるいは着衣から生じる塵埃が、細胞を培養する空間においては衛生環境に影響を与えてしまうためです。
我々はクリーンウェアの洗浄を専門業者に委託し、一着ずつ個包装された滅菌済みのクリーンウェアを入室ごとに開封して使用しています。
患者様に投与する細胞に万が一のことがないよう、衛生環境の維持には細心の注意を持って取り組んでいます。
医進会再生医療研究所
当施設で用いられる製造プロトコルや培養器材は、その多くが医進会再生医療研究所で開発されています。
例えば細胞の培養に用いる培地には、医進会再生医療研究所が独自に開発した組成を用いられています。
これによって細胞の活性が高く、より効果的にがん細胞を攻撃できる細胞製剤を提供することができます。
細胞培養加工施設の安全性
汚染リスクを持ち込まないための構造
細胞製剤は一般の医薬品と違い、滅菌操作を行うことができません。菌を滅殺するということは、生きた細胞にも少なからず影響を与えてしまうためです。
このような背景から、細胞製剤の製造所には菌を持ち込まないことが原則となります。
当施設では菌による汚染リスクを抑えるために、気流のコントロールや入室制限など様々な衛生管理を実施しています。
気流のコントロール
クリーンルーム内の空気は全てHEPAフィルターと言われる高性能フィルターを通して室内に流入します。
これに加えて部屋の清浄度ごとに気圧差を作ることで、グレードB→C→Dの順*に空気が押し出されていきます。
このように厳密に空気の流れをコントロールすることにより、室内のパーティクル(浮遊粒子)を基準値内に抑え、細胞への異物混入を防いでいます。
*グレードAは独立した封じ込め設備のためここでは除外します。